企業·IR情報広電の歴史

人と環境に優しいサービスを目指して(最近の20年間)

路面電車ルネッサンス

平成9年、新型の直通車両3950形を一挙に6編成投入し、面目を一新しました。この年、消費税率の改定があり当社も市内電車の運賃値上げを申請しました。当社は運行ルート変更による所要時間の短縮、LRV(Light Rail Vehicle超低床車両)の導入による快適性の向上、ターミナル駅の改良による乗り継ぎの利便性向上といった「路面電車のLRT(Light Rail Transit 近代的な路面電車のシステム)化」を目標に掲げ、その原資となる運賃改定を行いたい旨を中国運輸局長の諮問機関である中国地方交通審議会に諮りました。この審議会でオープンな議論をしていただいた結果、審議会のメンバー全員一致で当社案が承認され、超低床電車である5000形・グリーンムーバーの投入に始まる本格的なLRT化の推進、「路面電車ルネッサンス」を開始したのです。

電車の運行ルートの変更による所要時間の短縮効果について、当社は平和大通り線と広島駅前大橋線の建設を提案、広島市等の関係機関へ報告を行い、やがて短・中期的計画としてこれらのルート変更の構想が広島市の都市計画に取り入れられることになりました。

電車の車両(LRV)については、当時日本国内において車内の床が全て平らな超低床電車を製造できるメーカーがありませんでした。そこでドイツのシーメンス社に「グリーンムーバー」を発注し、平成11年に輸入開始しました。しかし外国製車両のため、メンテナンスや車内設計の制約など問題が残りました。

一方で国からの呼びかけによって、国内車両メーカーによる「超低床エルアールブイ台車技術研究組合」が結成され、超低床電車において最も重要な装置である、車軸のない台車が開発されました。この台車開発を受け、引き続き当社と近畿車輛(株)、三菱重工業(株)、東洋電機製造(株)の4社による共同プロジェクトの末、平成17年に完成したのが、純国産の完全超低床車両である5100形「グリーンムーバーマックス」でした。

平成25年からは、新型車両1000形の投入を開始しました。1000形は、5100形グリーンムーバーマックスのバリアフリー性能を継承しながら、全長を30mから18.6mにすることにより、市内線全ての路線で運行できるようにした車両です。平成25年2月に導入した2両(1001号・1002号)は「広島電鉄電車開業100周年記念車両」と位置づけ、特別仕様のデザイン・愛称(1001号「PICCOLO」、1002号「PICCOLA」)としました。平成26年2月に運行開始した1003号からは「グリーンムーバーLEX」として、水と緑の街、広島の景観イメージを表現した車両デザインを採用しています。

こうしたLRTの一環をなすLRVの導入と並行して、当社は広島県や広島市、JR西日本、地元町内会等と協同し、広電西広島・横川駅・広島港という広島市中心部の西・北・南の玄関口において、電停の移設や大規模な改修を行い、JR線や船との乗り継ぎの利便性を高める、結節点改良に取り組みました。また、他の電停においても、スロープの設置やホームの拡幅、上屋の大型化や接近表示システムの高度化など、お客様により快適にご利用いただける環境づくりに順次取り組んでいます。また、平成9年の運賃改定では、市内電車における乗換利用の際に50円加算していたものを無料とするなど、運賃制度の上でも、広島市内中心部を面的に移動していただきやすいようになりました。

より一層快適なバスサービスを目指して

バス事業は昭和40年代前半のモータリゼーションが急激に進んだ時代以降、昭和57年の1年間を除き、永年にわたって赤字を計上する時代が続きました。とりわけ、平成6年の新交通システム・アストラムラインの開業によって、当社の営業路線は打撃を受け、赤字が膨らんでいきました。

全社の経営を圧迫するバス部門の赤字に対する取り組みとして、まず体制の見直しを行い、平成7年に営業課制を導入し営業所単位での企画・決定機能を強化しました。これによって、路線ごとの特性に合ったダイヤ改正や路線の改廃などを、各営業課で迅速に進められる体制が整いました。こうして路線ごとの需給調整や、不採算路線の廃止を矢継ぎ早に行うとともに、社内においても各種手当ての廃止等を進め、労務面からの合理化にも取り組みました。平成14年の道路運送法改正によって、乗合バス事業業界においても「規制緩和」が実施されることになり、不採算路線からの退出がさらに加速される見通しとなりました。これに対し、平成13年から雇用期間を定めた契約社員制度を導入し、雇用の流動化を図るとともに、人件費の圧縮に取り組みました。こうした経営改善策が実を結び、平成15年度には、実に21年ぶりにバス部門が営業黒字に転換することができました。

さらに、平成21年には長い目で見た従業員の働く意欲を高める目的で、新たに職種別賃金制度を導入し、それまでの年齢・年功に偏っていた賃金制度の改革を行いました。これによって、従来の契約社員も正社員となり、「派遣切り」が社会問題となっていた中、全国的に注目を集めました。

平成12年の交通バリアフリー法施行などをきっかけに、バスに対してもバリアフリー化が求められるようになりました。当社は平成7年、広島市の福祉のまちづくり条例に合わせてリフト付バス2台を購入しました。また平成9年には、まだ量産が始まったばかりのノンステップバスを8台購入しました。その後も、お年寄りや車椅子・ベビーカーのご利用者はもとより、健常者のお客様にとっても乗降が容易な低床車両の導入を進めています。。

また、地球環境問題への対策が一層重要となる中、当社は平成9年から、新たに購入したバスにアイドリングストップ機能を装着しました。平成17年にはCNGバスを導入、平成21年からはハイブリッドバスを導入しているほか、無駄なアイドリングをやめ、燃費の良い運転に努める「エコドライブ運動」を社内で推進し、積極的な環境対策を進めています。

広島市内には6事業者のバス路線が混在することから、昭和58年より6社共通で利用できる回数券を販売しておりましたが、平成5年にはこの回数券を磁気カードに変更し、利便性を高めました。この磁気カードは、平成9年から当社の電車でも使えるようになり、呉市交通局も加わって利用範囲が広がりました。平成20年からは、従来の磁気カードの事業者に広島県東部エリアの事業者も加わって、ICカード「PASPY」を導入しました。PASPYが利用できる範囲の電車・バス等ではJR西日本の「ICOCA」も利用できるほか、瀬戸内海汽船や宮島航路といった複数の交通モードを乗り継ぐ場合の利便性も高まりました。平成27年には、他事業者と共同で、広島地区指定エリア内の電車・バスが乗り放題となる「広島ピースパス」を発売し、平成28年には、訪日外国人観光客向け乗車券「Visit Hiroshima Tourist Pass」を発売し、移動しやすい広島の街づくりに向けて利便性の向上に取り組んでいます。

平成24年には、呉市交通局が運行していたバス路線を当社が継承し、運行を開始しました。呉市では一般会計から交通事業会計への繰り出し金支出が常態化しており、民間への一括移譲を決定しましたが、入札の結果当社が全17路線の事業を引き継ぐこととなりました。

平成27年3月には、広島県内の交通事業者7社共同で、一部路線においてバスロケーションシステム「くるけん」を導入しました。パソコンやスマートフォンから専用サイトを通じて乗車したいバスの接近情報がいつでも見られるほか、ご利用の多い「広島駅」や「八丁堀」、「本通り」などの主要バス停留所へ案内表示機を設置し、「バスはいつ来るか分からない」といった不安の解消に努めています。

時代のニーズに応じた不動産事業

少子高齢化などの社会情勢の変化は、不動産の需要にも大きな変化をもたらしました。当社ではこれまで丘陵地の宅地開発を中心に行っていましたが、安佐南区川内の平地部や、「宇品グリーンアヴェニュー御幸の杜」といった市内中心部に近い箇所の開発を行いました。マンション事業にも本格的に着手し、「エレンシーレ宮島」や「アライヴコート西条駅前」や「アンヴェール比治山公園」、「アンヴェール五日市駅前」など、多様な需要に応じています。また、広島大学跡地の再開発事業「hitoto広島」プロジェクトにも参画しています。

「ひろしま西風新都」の一角に位置する石内東地区の開発計画は一時凍結していましたが、住居専用の団地から商業地も含めた複合団地計画に用途を変更し、平成24年に造成に着工しました。複合団地に「西風新都グリーンフォートそらの」と命名し、住宅・業務用地を含め平成27年に造成工事を完了しました。五日市インターチェンジに近接し、都市計画道路草津沼田線と石内中央線の交差部に隣接するという立地特性を活かし、住宅系の土地利用の他、商業・業務系や工業・流通系の複合的な土地利用を図るという方針に基づき、これらが調和した魅力ある街づくりを進めています。

当社における不動産事業は、これまで販売事業を中心に行ってきましたが、近年は、販売事業に比べ比較的堅実な収益を見込んで賃貸事業へとその重点をシフトしてきました。平成16年には管財部門から賃貸営業課を独立させ、賃貸事業の営業に力を入れています。

平成24年2月には、広島市内のオフィスビルの先駆的な存在であった第一広電ビル(昭和34年築)等の跡地に、当社、三井不動産(株)、 CMTBファシリティーズ(株)、(株)もみじ銀行による新しい14階建ての複合ビル「広島トランヴェールビルディング」を竣工しました。地下2F~地上3Fを商業施設としたこのビルは、空洞化が進む市内中心部の活性化に寄与できるものと期待しています。

平成26年1月、広島市中区八丁堀に所在する広島電鉄所有の「第二広電ビル」(昭和37年竣工)と日本生命所有の「日本生命広島第二ビル」(昭和45年竣工)を共同で、新たな複合オフィスビル(平成29年11月竣工予定)に建替えることについて日本生命保険相互会社と合意し、平成27年12月、建物本体の建設工事に着手しました。新ビルに「スタートラム広島」と命名し、地上16階、高さ80メートルという八丁堀エリアを代表するビルとなりました。

連結決算時代のグループ経営

広電グループは、昭和50年代より、「地域社会に貢献する」をキーワードとして事業展開し、現在もこの精神を引き継ぎ、時代のニーズやお客様の声に耳をかたむけたグループ会社の再編とともに、運輸、不動産だけでなく流通、建設、レジャー・サービスなど幅広い分野で事業展開を行ってまいりました。
平成11年にはエイチ・ディー西広島(株)として、己斐地区を運行するバス会社を設立しました。同地区は、狭小幅員の坂道が続くため小型の低床バスを導入し、「ボンバス」という愛称で皆さまに親しまれています。また、平成24年には、これまで発行済株式数の42%を保持していた芸陽バス株式会社についてさらに51%を取得し、子会社化しました。
平成15年には広電観光(株)の旅行業を切り離し、中国新聞グループの中国新聞トラベルサービス(株)と合併し、新たにひろでん中国新聞旅行(株)を設立いたしました。なお、広電観光(株)は、平成26年に広電エアサポート(株)に社名変更いたしました。
平成25年には広電不動産(株)、平成28年には広電興産(株)を吸収合併し、事業の効率的な経営を図りました。
平成30年には流通業界の競争激化を背景に、(株)広電ストアのスーパー事業を他社に譲渡し「マダムジョイ」全店を閉店いたしました。